— Present By —
はちみつ遊
その日の事を考えると、胸がドキドキした。
何をしよう。何をあげよう。何をしたら、喜んでもらえるのか。たくさん考えて、悩んで、その時間さえも充実していた。
「さくら……っ」
「小狼くん、小狼くんっ♡あぁん……っ」
ぎゅうぎゅうに抱き締められて、隙間なくくっついた肌と肌が、熱くなる。
二人が一線をこえてから、もうすぐ一年が経つ。
お互いを求めあって、貪るように愛し合う時間。一番近くに感じて、ひとつになれるような錯覚を起こすほど、幸せな瞬間。
(小狼くんに、めいっぱいに喜んでほしい……)
さくらの気持ちは、ひとつだった。
―――小狼の誕生日の、一ヶ月前。
この時。浮かんだ考えを、さくらは実行に移す事を決めた。
「小狼様、さくら様。到着いたしました」
優しい声に、意識が浮上する。
いつのまに眠っていたのだろう。山道に入ったあたりから記憶がない。車の揺れがちょうど良くて、気持ちよく寝入ってしまった。
(昨日、あんまり眠れなかったから……)
「偉さん!ごめんなさい、寝ちゃった」
「謝ることなんて何もありませんよ、さくら様。小狼様も、ぐっすり眠れたようですね」
言われて、さくらは驚いて隣を見た。
小狼の肩にもたれかかって眠ってしまったさくら。どうやら、小狼もつられて眠りこんでいたらしい。少しだけ寝惚けた、無防備な横顔に、ドキリとする。
寄り添って気持ち良さそうに眠る二人を、偉の優しい目がルームミラー越しに見つめていたのは、ほんの数分前の事。起こすのを躊躇う程、微笑ましかったと言う偉に、さくらは頬を赤く染める。
「小狼くんも寝ちゃうなんて、珍しいね」
「さくらがやわらかくてあったかいから、つい……」
「っ!」
ますます赤くなったさくらの頬を、小狼は愛おしそうに見つめた。
トランクから下ろした二人分の荷物を、小狼が受け取る。それを、迎えてくれたホテルマンが受け取って、三人はロビーへと案内された。
さくらが率先して手続きに向かい、その間、小狼は椅子に座って待つ。常とは違う立ち位置に、小狼はどこかそわそわしているようだった。
ロビーは天井が高く、窓も大きい。外には、雄大な山々が見えた。今日は天気がいいので、自然の緑が目に眩しい。小狼は出されたコーヒーを飲んで、ホッと息をついた。
チェックイン作業を終えたさくらと偉が、小狼の元へと戻ってきた。
「偉さん、ありがとうございます。送ってくれて、助かりました。ホテルへの対応も……私だけじゃ出来なかったので」
未成年の二人が泊まるには、大人の許可がいる。今回、さくらは藤隆と桃矢を説得してその許可を書面でもらい、偉には付き添いとして来てもらったのだ。
お礼を言うさくらに、偉は笑みを深くして首を振った。そうして一礼すると、車で元来た道を戻っていった。
「離れにお部屋があるの。そっちは純和風のお部屋で、桧の露天風呂もついてるんだよ」
「すごいな。……本当にいいのか?甘えて」
「うん!だって、小狼くんのお誕生日のお祝いだもん」
ホテルの本館を出て、中庭に作られた石畳を二人は歩いた。離れの部屋は少なく、宿泊客も多くない。だからか、すごく静かだった。庭園内に作られた池の中で、小さな魚が跳ねる。赤いアーチ橋を渡っていくと、二人が今日泊まる離れの部屋があった。
「お夕飯は、本館の方のレストランなんだって。楽しみだね。それまで時間があるから、どうしよう?お外、散歩する?それとも部屋の中でゆっくりする?」
「俺はどっちでも……さくらがしたい方でいい」
荷物を置いて、ジャケットをクローゼットの中にかける。さくらの返答がないので不思議に思って振り向くと、すぐ傍にいたから小狼は驚いた。さくらは、ぷく、と頬を膨らませて、怒った表情で言った。
「だぁめ。今日は、小狼くんがしたい事をするの!」
「そ、そうか」
「そうだよ?」
さくらの吊り上がった眉が一瞬で下がって、ふふっ、と笑みが浮かんだ。小狼は、さくらのその顔にキュンと胸をときめかせ、思わず手を伸ばす。
「どっち?」
「え?」
「お外に行く?お部屋にする?」
わくわくしているのが顔にわかりやすく書いてある。さくらの視線は時折、窓の外へと向けられていた。
庭園や、ホテルの近くにあった温泉街に興味を持っているだろう事は、小狼にも容易に予想がついた。苦笑して、「外に行こう」と言うと、さくらは嬉しそうに笑って頷いた。
二人は部屋にあった浴衣に着替えて、散策へと出掛けた。お互いの浴衣姿に、内心でドキドキしながら、寄り添って歩く。
ホテルの敷地内から出て少し歩くと、こじんまりとした温泉街がある。お土産店やお茶屋さんなどが軒を連ね、たくさんの人で賑わっていた。
店頭で蒸しているお饅頭の匂いや賑やかな声に、ふわふわと足取りが軽くなる。
「さくら。はぐれるなよ」
「うんっ」
二人はしっかりと手を繋いで、同じ歩調で歩いた。お揃いの下駄が、カラン、コロンと小気味いい音をたてる。美味しい匂いに引き寄せられた二人は、我慢できずに熱々の温泉饅頭を食べた。はふはふと一生懸命に食べるさくらに、小狼は笑って。自分も甘いお饅頭を食べた。
お土産を物色したり、面白いご当地ものを見て笑ったり。あっという間に時間は過ぎた。温泉街を抜けて、水音を頼りに歩いていくと、小さな川と滝があった。涼やかな風と水飛沫。頭上を覆う緑の木々を見上げて、深呼吸をした。
「いいところだな」
「本当?少し遠かったけど、ここにしてよかった。あのね、知世ちゃんがたくさん手伝ってくれたの。いろんな温泉宿とか、他にもリゾートホテルとか。小狼くんが好きそうなところ、選んだんだぁ」
親身になって手伝ってくれた知世達に、さくらは心の中で感謝する。
「……ありがとう。でも正直に言うと、さくらと二人なら、どこでも楽しい」
ぽつりと、付け加えられた一言に、さくらは赤面した。心臓の音がうるさくなって、体が熱くなる。繋いだ手からばれるんじゃないかと、さくらは恥ずかしくなった。
「部屋でゆっくりするか。そういえば、温泉がついてるんだよな」
小狼の言葉に頷いて、二人は下駄を鳴らしてホテルの部屋へと戻っていった。
一歩一歩、近づくごとに。さくらの緊張感は高まっていく。小狼はきっと、気づいていない。
楽しそうにする横顔を見つめて、きゅ、と唇を結んだ。
部屋に戻ると、ちょうど時計の針が四時を指した。夕食の時間は六時なので、まだ時間がある。
さくらは部屋に入ると、窓へと近づいた。そうして、薄いレースのカーテンを静かに閉めた。部屋の中は少しだけ翳ったが、それでも明るい。
「小狼くん……お腹、すいてる?」
「いや。さっき、饅頭食べたからそうでもない。夕飯までには空くかな」
「そっか」
さくらは、ドクドクと脈打つ自分の鼓動を聞いていた。どんどん大きくなって、自分の声さえ聞こえなくなりそうだ。手が震える。それでも、勇気を出して、動いた。
「……じゃあ、つまみぐい……、する?」
しゅるり、と帯紐を解いて、小狼の傍らへと膝をついた。
驚きに見開かれる小狼の瞳を見つめながら、さくらは羞恥心を押し込めて、自分から口づける。はだけた胸元を押し付けるように、ぎゅっと抱き着いた。
(うぅ。は、恥ずかしいよぅ。でも……決めたんだもん)
さくらは薄く瞼を開けると、至近距離で小狼を見つめた。そうして、啄むようにキスをしたあと、自ら舌を差し出した。
小狼は小さく震えたあと、さくらの背中に手を回して強く抱きしめ返した。まるでスイッチが入ったみたいに。口づけは性急になり、小狼はそのままさくらを畳の上に押し倒した。
「ん……、ぁ、……っ」
「……さくら……、どうしたんだ?こんな事……自分からは、恥ずかしがってしないのに」
これまでのさくらは、明るいところではそういう行為をしたがらなかった。恥ずかしいからと言って、夜も明かりを小さく落としてしまう。自分から言い出す事も、ねだる事もなかった。
なのに。今日はこんなに明るい時間に、自分から唇を寄せて、肌に触れさせる。
そのギャップが、小狼を思いのほか興奮させていた。
浴衣を脱がすと、可愛い花柄の下着が目に飛び込んでくる。綺麗なペールグリーンに、ピンクの小さな花。明るいお陰で、よく見える。
「あっ……。これも、ね。新しいの、選んだの。知世ちゃんに、選ぶの手伝ってもらって……」
「可愛い」
脳直で言葉が零れ落ちる。大道寺にはよくお礼を言っておかなければと、小狼は思った。
下着を外し、ふる、と震える小ぶりの胸を優しく触った。それだけで、ピンクの乳首がツンと尖る。小狼は愛おしむように口づけたあと、舌で舐り歯を立てた。
「あっ♡あ……♡」
「ん……。可愛い、さくら」
吸ったり舐めたり、甘く噛んだり。さくらの白い肌に、小狼のつけた痕が花弁のように散っていく。
小狼の昂ぶりは、下着の上からでもわかる程に大きくなっていた。さくらは、そっと手で撫でた。小狼は小さく声を漏らして、眉を顰める。
「……さくら?」
「私も、小狼くんにしていい……?」
「えっ」
小狼は驚いた。さくらからそんな事を言うのは初めてで、戸惑う。
だけどそれ以上に、下着の上から優しく撫でるさくらの手と、熱っぽく見つめる潤んだ瞳に、誘惑される。断れるわけが、無い。
小狼が頷いたのを確認して、さくらは小狼の分身を下着越しに撫でた。硬さを増したそれに、少し驚いたあと、すり、と頬ずりする。さくらの行動を信じられない顔で見つめながらも、小狼の欲望は正直だった。ゆっくりと下着を下ろすと、逞しい肉棒がさくらの眼前にそそり立った。
「ん……♡」
さくらは、ちゅう、と口づけたあと、舌で舐めた。躊躇いながらも、どこをどうすれば気持ちいいのかを探るように、丁寧に舌を這わせる。
両手で根元を包むようにして、さわさわと撫でる。苦しそうにする小狼と視線を合わせながら、さくらはゆっくりと口内へと招き入れた。
「う……っ、さくら……」
「……♡」
(小狼くん、の、おっきくて……、あつい……♡)
不安もあったけれど、いざ自分のナカに入ってくると、愛おしい気持ちが増した。
さくらは歯に当たらないよう注意しながら、唇と舌で一生懸命奉仕した。時々苦しくて涙が出るけれど、それ以上に嬉しい気持ちの方が勝っていた。小狼が気持ちよさそうに息を漏らして、さくらの頭を撫でていたからだ。
(小狼くん、喜んでくれてる……?嬉しい……♡)
口を窄めて、頭を動かす。
練習の成果は、出ているだろうか。奈緒子にもらった雑誌を読んだり、千春に話を聞いたりして。ケルベロスに怪しまれたりしながらも、さくらは練習を重ねた。
「さくら……!もう、出る……。口、離して……!」
吐息交じりに小狼に言われても、さくらは聞かなかった。逆に、動きを激しくする。根元を手で扱きながら、小さな口いっぱいに肉棒を飲み込む。それを繰り返しながら、涙目で小狼を見つめた。
(出して……♡出して♡さくらのお口に、小狼くんのいっぱい、出して……♡)
「……っ、さくら!」
小狼は切なそうに瞳を揺らしたあと、さくらの頭を抱えて腰を動かした。喉奥まで当たって、その瞬間、小狼は精を吐き出した。さくらは苦しさに咳き込みそうになるのを堪えて、それを受け止める。独特の匂いと熱に、下半身が疼いた。
口の中に放たれた精液を、さくらはゆっくりと飲み込んだ。しかしうまく飲みきれずに、少しだけ吐き出してしまった。
「さくら!大丈夫か……?無理するな」
「……っ、はうぅ……。これの練習は、してなかったから……」
「練習?」
「ほえっ。な、なんでもないの!」
覗き込む小狼の瞳に、さくらは途端に真っ赤になった。今になって、恥ずかしい気持ちが襲ってくる。半裸の自分の姿を見下ろして、たまらず背を向けたさくらを、小狼は強く抱きしめた。
「……さくら。俺の為に、してくれたの?」
「う、うん……。さくら、ちゃんと出来てた?小狼くんの事、気持ちよく出来た?」
「馬鹿……!当たり前だろ!」
小狼の熱い唇が、さくらの首筋に吸い付いた。後ろからすっぽりと抱きすくめられて、さくらがホッと安心したのも束の間、悪戯な手が下着の中へと潜り込んだ。しっとりと濡れたそこは、小狼の指を難なく受け入れる。
「あっ♡あぁ……!小狼くん、指、だめ……っ」
「すごい。さくらのココ、ぬるぬるだ……。俺の舐めて、欲しくなったのか?」
「あっ♡あっ♡」
下着の中で出し入れされる長い指。くちゅくちゅと聞こえる卑猥な水音。小狼の肉棒が再び固くなって、さくらのお尻を擦った。
「……俺も。もう、すぐにでもさくらのナカに入りたい。いいか?」
「うん……っ♡小狼くんの、好きなようにしていいんだよ……?」
さくらの下着を脱がすと、とろりとした愛液が垂れた。小狼はさくらを正面から抱きしめてキスをし、ゆっくりと陰茎を挿入した。漏れる嬌声も吐息も、激しいキスで消える。パンッと、皮膚がぶつかる音が静かな部屋に響いた。
「ふ、ぁぁ♡あぁぁ♡」
「さくら……っ、すごい、気持ち、いい」
小狼は小刻みに息をしながら、激しく腰を打ち付けた。足首に引っかかったさくらの下着が、振動に揺れる。小狼はさくらの足を担ぎ上げて、更に深くまで挿入した。快感に下がった子宮口にキスするように、鈴口が吸い付く。
「小狼くん、小狼くん……っ♡」
「さくら……っ、ごめん、加減出来ない……っ」
「あっ、ぁ……っ♡ふぁぁ―――♡♡」
快感の海に溺れて、離れたりしないように。二人は強く抱き合って、何度も何度も、キスをした。
「美味しいね、小狼くんっ」
「ああ。すごく美味い。でも……、さくらの方が、俺は好きだな」
「……っ!!そんなの、言っちゃダメだよ……」
「さくらの作ったごはんって、意味だぞ?」
「わ、わかってるもんっ」
季節の食材を使ったフルコースで、前菜からメイン、デザートまで美味しかった。用意された個室で、二人は運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。
「……っ♡小狼くん、ダメだよぉ」
テーブルの下で、悪戯に絡む足と足。さくらの浴衣を器用にまくり上げて、太腿や膝裏を撫でる。そんな少しの刺激も、先程の行為を思い出させて、さくらは顔を赤く染め上げた。替えたばかりの下着が、また濡れてしまう。
「早く、部屋に帰ろう?さくら……」
見つめる瞳は、獣のそれと同じだ。さくらはこれから美味しく食べられてしまう己を想像して、身を震わせた。デザートの甘さがわからないくらいに、頭の中は小狼でいっぱいになっていた。
部屋に戻ると、布団が引かれていた。繋いだ手を引かれ、そのままやわらかな布団へと雪崩れ込む。小狼は性急にさくらの浴衣を脱がせて、脚を大きく開かせ秘部へと唇を寄せた。
「ひ、ぁ、あ……っ♡」
じゅっ、と音を立てて啜る。太腿に指が食い込んで、それさえも快感へと変わる。あとからあとから溢れる愛液を小狼は夢中で啜った。
「やっぱり、さくらの方が美味い……」
「やぁん♡喋っちゃ、だめぇ」
陰部で小狼の声が振動になって、更なる快感を煽る。小狼はぺろりと唇を舐めると、飽きることなくさくらの秘部を刺激し、溢れる蜜を堪能した。
「んー……っ、あまい……、たまらないな」
「あっ♡あっ♡イっちゃ、イっちゃうよぉ♡」
「いいよ。もっと飲ませて?さくら」
赤く腫れたクリ〇リスを指でぐにぐにと弄られ、さくらは高く鳴いた。ぷしゃぁっ、と噴き出した潮を、小狼は受け止めて、喉を鳴らして飲んだ。
肩で息をするさくらを見下ろして、小狼は口元を乱暴に拭う。そうして、はだけた浴衣を脱いで放った。引き締まった肉体と恍惚とした表情に、さくらの胸はときめいた。
(小狼くん……。どうしよう……、私、しんじゃいそう……)
何度となく愛されて、奥深くまで繋がって。それなのにまだ、初めての時みたいに緊張して、ドキドキする。『好き』の気持ちに、際限は無いのだろうか。他の人もみんな、こんな恋をしているのだろうか。
「さくら……」
「小狼くん……」
ゆっくりと膣内に入ってくる肉棒に、さくらはぎゅっと目を閉じた。自分のナカを埋めていく小狼の存在が、嬉しくて、嬉しすぎて。胸が切なくなる。
さらりと、頬を撫でられる。目を開けると、すぐ近くに小狼の顔があって、さくらを見ていた。なぜだかわからないけれど、涙が溢れた。
「―――ひゃぁんっ♡あぁ、あっ♡♡」
腰を引いて、一気に最奥まで貫かれる。その快感に、さくらは軽く絶頂に達してしまった。
小狼はさくらの頬を包んで、少しの表情も声も逃さないというように見つめたまま、腰を動かした。さくらも、その視線から目を逸らせず、小狼を見つめながらただ快感に翻弄される。
(小狼くんが、見てる……。私、小狼くんの目に、どんな風に映ってるの……?)
お互いを求めあって、貪るように愛し合う時間。一番近くに感じて、ひとつになれるような錯覚を起こすほど、幸せな瞬間。
(小狼くんも、今、私と同じことを思ってる……?)
「あっ♡あぁ♡……だめぇ、気持ちいいよぉ♡」
「俺も……っ、すごく、気持ちいい」
「小狼くん、小狼くん……っ♡小狼くぅん♡」
「さくら……、好きだ。お前が、好きだ……!」
私も、大好き。
そう言おうとした瞬間、小狼はさくらの片方の足を抱えあげて、より深くまで挿入した。
―――ぱんっ!ぱんっ!
「はにゃぁぁんっ♡♡あっ♡やらぁ♡ずっと、イってるのぉ……っ、ふあぁぁ♡♡」
大きな快感の波に襲われて、さくらは堪らず絶頂に達した。
それでも小狼は動きを止めない。イったばかりの敏感な膣内に、容赦なく欲望を打ち付けた。さくらは幼い子供のようにたとたどしく喘いで、何度も透明な潮を噴いた。
「さくら……好きだ……」
「ひゃお、ら……、ぁ♡も、らめぇ……♡」
「ごめん……。もう一回、だけ」
「ひゃあぁんっ♡」
もう一回だけ、が。何度となく続いて。さくらは何度も意識を飛ばしながらも、小狼の腕の中で幸せな時間を過ごした。
「……声、少し枯れちゃったな。ごめん」
「謝らなくていいよぉ」
少しだけ重い腰をさすりながら、さくらはあたたかなお湯の中でほう、と息を吐いた。時刻はもうすぐ、てっぺんを指す。日付を跨いで、小狼の誕生日が終わる。
そういえばお風呂に入っていない事を思い出して、事を終えて少し経ってから、二人で部屋の露天風呂に入る事にした。ふらふらと覚束ない足取りのさくらを、小狼の手がしっかりと支えてくれた。
小狼は、さすがにやりすぎたと反省しているのか、言葉少なにさくらの様子を窺っていた。
さくらは小さく笑って、小狼の唇にキスをする。
「私も嬉しかった」
「さくら……」
「小狼くんを、めいっぱい喜ばせたかったから」
満面の笑顔でそう言ったさくらに、小狼は頬を赤くして「ありがとう」と言った。
ぱしゃんと、お湯が跳ねる。一気に近づいた距離。至近距離で見つめられただけで、また心臓がうるさくなる。
「キスしていいか?」
あんなにたくさんの事をしたあとでも、律儀な小狼が愛おしくて、笑みが溢れた。
さくらの返事を聞くのが早いか否か、唇は優しく塞がれる。
ちゅ、ちゅ、と止まないキスの合間に、さくらは言った。
「誕生日だから……小狼くんに、……ん……っ、もう、喋れないよぉ」
「喋ってるさくらの唇、可愛くて……。ちゅ」
「ちゅ、ん……♡もう……」
さくらは人差し指を小狼の唇に当てて、キスを止める。
「あのね。今日は小狼くんの事、めいっぱいに喜ばせたいって思ったんだ。でもそれは、誕生日だからじゃないんだって、さっき思ったの」
「……?」
「小狼くんの事が大好きだから。いつだって、喜んでほしいんだよ」
誕生日だけが特別じゃない。一緒にいる日々が特別で、奇跡みたいに幸せな事。大好きな人に喜んでもらえたら、自分の事のように嬉しい。
そんな当たり前の事を、二人で感じられるこの瞬間が、なによりも愛おしい。
(だから今年のプレゼントは……『裸の私』を全部、小狼くんにあげたかったんだ)
「今日は、小狼くんが生まれてきてくれた日だから。いっしょにいられて嬉しい!」
「さくら……」
「おめでとう、小狼くん。……大好き」
「……!!」
ちゅ、と。さくらから小狼に、触れるだけのキスをした。
次の瞬間、強く抱き締められた。密着して、さくらはある違和感に気づく。
「ほ、ほぇぇ?小狼くん、また……?」
その時ちょうど、時計がてっぺんを過ぎた。日付は変わって、14日。
小狼はさくらを抱き上げて、勢いよく立ち上がった。大きく跳ねるお湯に驚く間もなく、濡れた体のまま布団へと連れて行かれる。
「……誕生日、祝ってくれてありがとう。今度は、俺がさくらをめいっぱいに幸せにする」
「ほえぇぇぇ!?」
「明日は、ゆっくり帰ろうな?」
特別な誕生日の日が終わっても。また、一緒にいられる特別な日々が始まる。
とりあえず明日は、揃って寝不足の目を擦りながら美味しい朝ごはんを食べる事になるのだけれど。
今はまだ、熱くて甘いシーツの海で二人きり―――幸せな時間を過ごすのだった。
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